趣味クオリティを広める

趣味クオリティを広める
趣味クオリティを広める

私たちのように万年筆やステーショナリーを専門的に扱う、お客様の趣味的要望に応えようとする店の課題は、自分たちのしていることを趣味の世界以外の一般の人にも、存在や価値観を知らせることだと思っています。
自分たちが扱っている実用を遥かに超えたクオリティのステーショナリーを使うと、どれだけ気分が良いかということを知ってもらうこと。
それを知らなければ、きっと今使っているものを不満に思うことはないけれど、良いものを知ると今まで使っていた普及品的なもののクオリティでは楽しいと思わなくなります。
その辺りのことを広めるように努力して、自分たちの面白いを伝えるようにしなければいけない。

それはペン先調整も同じです。
きっと多くの人は万年筆のペン先を調整できるということを知りません。
自分が買ったペンが書きにくかったり、書けなかったりしたら、ペン先を交換するしかないと思っている人が多い。
これは持論ですが、万年筆の構造をしていたものなら、ペン先をちゃんと調整したら、金ペンは金ペンの、鉄ペンは鉄ペンなりに書きやすくなる。極端な言い方をするとどんなものでも書きやすくなると思っています。
それだけルイス・エドソン・ウォーターマンが発明した、毛細管現象によってインクがペン先まで伝わる構造は優れているということだと思います。

もちろんはじめから100%のポテンシャルを発揮できている万年筆も中にはあって、それはペン先調整の必要がありません。
よくどんな時にペン先調整をしたらいいのかと聞かれますが、書きにくいと思うペンだけをお持ち下さいと言います。
皆様自分のお持ちのペンが正しい状態かどうか気にされるけれど、ご自分が書きにくいと思っているのであれば、その万年筆のペン先がいくら教科書通り正しくても調整の余地があります。
そういうことができるのが万年筆の良いところで、正解かどうかよりも、自分に合っているかどうかの方が大切です。こういう曖昧な要素があって、パーソナルな仕様が優先される側面が万年筆にはあるので、私はペン先調整を仕事にしたい、そして自分にできると考えました。

きっと何でも理詰めできっちりと考える人にはその人の、美的感覚・芸術的感覚に優れた人にはその人のやり方があるのだと思いますが、私は言葉を交わしたり、そのペン先をルーペで見て使う人の意向を汲み取るようにしたい。
そういうペン先調整を何というか分からないけれど、対話型のペン先調整といつも自分では思っています。
こうやって調整したペン先の書き味を知ってもらえるようにしていかなければ、万年筆もペン先調整も一部の趣味で使う人だけのものになってしまいます。
一般的な人への広がりがないと、後世に残すことができないのではないかと思うことがあります。

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*前の記事「手帳の風景を作るリフィル」