日本的な万年筆

日本的な万年筆
日本的な万年筆

お墓参り、迎え火、送り火など日本的な行事があるからか、今の季節は日本的なものに心惹かれる季節であると思っています。

万年筆も同様で、日本的なものに黒インクを入れて原稿用紙などに書きたいと思います。
万年筆で最も日本的な万年筆は、国産のものであることはもちろんですが、その中でもパイロットカスタム845だと思っています。
この万年筆ほど、日本的な美意識を感じさせる万年筆はないのではないか。
アメリカではプラスチックが開発されていて、万年筆も効率よく大量生産できる時代に突入していた頃、日本の万年筆はまだエボナイト使っていました。
それは職人さんが1本ずつ削り出さないと万年筆にすることができませんでしたが、当時の日本はプラスチックで大量生産をする機械初期投資よりも、人の手の方が安かったのか、エボナイトで万年筆を生産しているメーカーがほとんどでした。

エボナイトは、質量も低く、熱伝導率も低いので万年筆に適した素材ですが、紫外線にあたると茶褐色に変色するという欠点がありました。
これに漆を塗ることで克服したのがパイロットで、80年以上も前にこれを完成させています。

カスタム845のボディは、普通のプラスチックのボディに見えながら、実はエボナイトのボディに漆塗りという仕様になっているというこだわった仕様になっていて、そのさりげなさも含めて、日本的な美意識のある万年筆だと思います。
エボナイトに漆塗りということで、私が生まれるよりもずっと以前に万年筆製作に携わっていた職人さんたちや、日本の万年筆の歴史の中に存在したであろう人たちに思いを馳せたりしています。

カスタム845が日本的な美意識を感じさせる万年筆なら、当店オリジナルのこしらえはもっと直接的に日本らしさを表現しています。
こしらえは当店と工房楔のオリジナル企画で、パイロットカスタムヘリテイジ912、カスタム742などの首軸が入る、銘木の万年筆用ボディです。
こしらえはその名前からも非常に日本的なものですが、もちろん名前だけではありません。
万年筆のペン先を名刀の刀身に見立てて、キャップとボディを鞘と柄に見立てました。
ペン先は使い込むうちに育ち、そのペン先とともに育つ、相応しい外装があって然るべきで、それが工房楔の永田氏が厳選し、高い技術と細心の注意を払って削り出す銘木の万年筆用ボディこしらえです。

こしらえは使っていくうちに、用途が変わってしまっても、育て上げた銘木のボディはそのままに違うペン先をつけることができるし、同じペン先で気分を変えたいと思った時にも代えることができる。
刀身(ペン先)とこしらえ(ボディ)は一対のものではなく、独立した、それのみを育て上げることが可能なものだというところが、既存の万年筆と違うところです。

こしらえに数あるバリエーションの中から選んだペン先をつけて書くとき、私は日本的なものを手にしていると実感できる。
万年筆というと欧米発祥のものだけど、それが日本という国で日本の文化に触れて、構造は同じでも全く異なる日本独自のものになっていると思っています。

⇒パイロット カスタム845
⇒Pen and message.オリジナル工房楔「こしらえ」