世代を超えて

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最近、万年筆を使っている若い人をよく見かけます。
店に出入りしている、すぐ隣の中学校の生徒さんたち。母校で話をさせていただいた時に万年筆を使っていると手を上げてくれた大学生。お父様と一緒に、長く使える金のペン先が付いた万年筆を、と買いに来てくれた高校生もいました。
万年筆を使う若い世代の人はちゃんと育っています。

それはきっと、シャープペンシルやボールペンの延長で気軽に使える、安くて質の良い万年筆が続々発売されていることが大きく影響していると思っています。
そういう万年筆でこの世界に入ってきてくれた人たちに対して、次は何を使ってもらおうか、そして大人になって万年筆にお金が使えるようになった時に、どんな万年筆の世界を見せてあげられるか、万年筆を販売している店は考えておく必要があります。

今、日本の万年筆業界は安価なものが販売の中心になっているようで、それには危機感を持っています。
たしかに実店舗でモノが売れにくい現状において、売りやすいのは単価の安い、お客様が手にとってそのままレジに持ってきてくれるものだけど、それだけではいけない。
お店はお客様の要望に合わせて、高いものにも安いものにも対応する必要がある。
定番の、若い人たちに憧れを持ってもらえるような万年筆を使っていることも、万年筆を使う大人の責任なのではないかと思います。

若い人に憧れてもらえる万年筆として、オーバーサイズの万年筆を今回は取り上げたいと思います。
当店が独自に輸入しているウォール・エバーシャープ社のデコバンドもそれにあたりますが、これに関してはまた別の機会にしたいと思います。

パイロットカスタム漆。
バランスに優れ、書くことにおいて完璧な万年筆、カスタム845をそのまま大きくしたような万年筆ですが、その方向性はかなり違っています。
カスタム845は日本的な美意識を持った、書くことにおいて完璧な万年筆を目指して作られたものだと私は思っていますが、そのライバルはペリカンM800ということになります。
カスタム漆は柔らかい大型のペン先による書き味の良さを誇る万年筆で、書く道具というよりも、趣味のものといった要素が強い。
エボナイトに漆塗りボディのデザインは、何の変哲もないオーソドックスな仕様になっていますが、その書き味こそが趣味のものであって、 趣味としての万年筆のひとつの形を見せようとしているかもしれないと思います。

カクノという手軽に使うことができる万年筆で若いお客様をこの世界に迎え入れて、この世界に少しでも長く遊んでるもらうために、その後のステップアップした商品も用意しておかなくてはいけない。
そのパイロットとしてのステップアップの頂点に、カスタム漆があると思います。

⇒パイロット カスタム URUSHI FKV-88SR-B

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