カランダッシュ RNX316

カランダッシュ RNX316
カランダッシュ RNX316

万年筆の楽しさは書くことだけではなく、その姿形を愛でたり、感触を確かめたり、素材を感じたりすることにもあるのに、私は書くことについてばかり言及してきたような気がします。

もちろん書くことは万年筆の使用目的ですが、それならば書き味の良いペン先とインクを絶やさずにペン先に送り込み続けてくれる優れたペン芯があれば、その他の部分は何もいらない。
それは万年筆の楽しみの半分でしかないし、万年筆を非常に偏った側面だけでしか評価していないことになるのではないかと、カランダッシュの最新作RNX316を見て思いました。

ペン先を金ペンではなく、ステンレスにして、非常に凝った黒のPVDコーティングのペン先からもカランダッシュのその主張は伝わってきます。

この万年筆の直線と曲線が作り出す複雑な造形や、表面処理、装飾的な刻印などを見ていると時間を忘れるほどおもしろい。
ラインをたどったり、小さな刻印を見つけてその精密さに感心したり。

でも、この万年筆を距離を置いて全体を見てみると、安定感のある普遍的でクラシカルなフォルムなのではないかと、ふと思いました。

ペンはこういう形であって欲しいという、中央辺りにやや太さのある、見ていて安心できる形に、万年筆や他の筆記具のデザインセオリーをちゃんと守って作られた落ち着きを感じます。
そして、斬新だと思える首軸の外し方も実はこのクラシカルなデザインを演出するのに一役かっています。

この万年筆は尻軸を回転させることで、首軸のネジが緩んで外れる構造になっています。
首軸を直接回転させる方式だと首軸とボディの角が合わないということも起きやすく、それを防ぐための工夫だと思われますが、回転させるための尻軸ができたことで、金属の塊に見えそうなこの万年筆をクラシカルな雰囲気にさせているのかもしれないと思いました。

もしかしたら、このRNX316の企画者はボディに尻軸のラインをどうしても入れたかったのではないかと思ったりします。
まあこの万年筆が吸入式で、この尻軸が吸入ノブだったら一番面白いのかもしれませんが、それはあまりにもカランダッシュらしくない。

尻軸を回すことでボディ内側にシリンダーが回り、首軸のネジが緩む。これも何度も回して遊びたくなるような機構で、書く以外の楽しみはここにもあります。
新しいものは好きだけどただ斬新なだけでは好きになれない。
どこか古典的な要素も感じられながら、新鮮な要素があるもの。
そんなものに特に男性は惹かれるのではないでしょうか。

メカ好きの男心(女性でもこういった面白さを理解する人もおられますが)をくすぐる万年筆。それがステンレスの名を冠したRNX316です。

⇒カランダッシュ RNX316