ペリカンM805ブルーデューン~強い青のインクを入れたい万年筆~

ペリカンM805ブルーデューン~強い青のインクを入れたい万年筆~
ペリカンM805ブルーデューン~強い青のインクを入れたい万年筆~

ブルーのインクが好きな人は多い。
特に強い青色、発色の良いブルーは人気があって、どのインクがそれに当たるか、よく質問されます。
エーデルシュタインインクのサファイア、ビスコンティブルー、エルバンサファイアブルー、色彩雫朝顔、最近発売されたラミーの新しい鉱物をテーマにしたインクのシリーズアズライトなどがそれに当たります。
そこまでのこだわりはないけれど、私も基本はブルーかブルーブラックのインクで、他の色を万年筆に入れると、その万年筆の出番が減ってしまったりします。
そんなつもりはなかったけれど、やはり好きで使っていることに気付きました。
万年筆のインクの売れ行きもブルーが一番良いし、万年筆のインクらしく色ムラが出たりするので、書いていて楽しいと思います。
そういうことにも関係あるのか、限定品でもブルー軸の万年筆が多いような気がします。そしてそれらはいつも人気があります。

この度ペリカンからもブルーの軸の限定品「M805ブルーデューン」が発売されました。
青い砂丘というテーマは何ともロマンチックで幻想的な感じで、縦縞の生真面目な印象のあるペリカンのイメージとはまた違った世界観です。
しかしベースモデルは定番中の定番M805なので、書き味やバランスは間違いがない。
しっかりとした定番万年筆があるからこそ、そこから外れた遊びが生きています。

一瞬で情報が世界中に飛んでしまう昨今において、そして世界中のモノ作りが国境を超えて絡み合う今の時代において、ドイツ製だから質実剛健だと語るのはナンセンスになってきています。
そんな時代だからこそ、それぞれのメーカーらしいモノの示し方、もの作りのこだわりを持ち続けることが大切なのだと思います。
たくさんの情報・たくさんのモノの中に埋もれないためにも、違うエッセンスを取り入れてもルーツをはっきり示して、アイデンティティを明確にすることは忘れてはいけない。ブルーデューンを見てそう思いました。

定番品からかけ離れた面白いモノも限定品のひとつのあり方ですが、定番品をベースにしてより多くの人の心をつかめるようにイメージを変えた限定品もあって、M805ブルーデューンは後者に当たります。
ペリカンはこのタイプの限定品を数多く発売してきましたし、今年はM600バイオレットホワイトという話題作の発売も控えています。

限定品は生産本数分を売り切ってしまったら終わりですが、定番品は作り続ける。
限定品をきっかけにペリカンの万年筆を手にして、その使用感、握り心地の良さに他社にはないものを感じ取った人は、きっと次の万年筆にもペリカンを選ぶだろうという、ペリカン社の目論見が限定品にはあるような気がします。
たしかにM800/805の握った時の手の馴染み、自然に持てるサイズ感は、他モデルではそう多くないのかもしれません。
長年M800を使ってきたことも理由なのかもしれませんが、それだけではない。
やはりM800/805は定番中の定番の万年筆だと思います。

M805ブルーデューンに吸入させるインクの色は、そのボディのようにはっきりした、強めのブルーが合うような気がします。
でも10人いたら10人の、ブルーデューンに合うインクがあるのだと思います。

⇒Pelikan特別生産品・ブルーデューン

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2010.10.29「趣味の道具か、実用か ペリカンM800ブルー・オ・ブルー」
2017.12.8「趣味の道具か、実用か2・ペリカンM805オーシャンスワール」

*前の記事「万年筆の本当の魅力 〜ファーバーカステルクラシックコレクションの存在〜」

万年筆の本当の魅力 〜ファーバーカステルクラシックコレクションの存在〜

万年筆の本当の魅力 〜ファーバーカステルクラシックコレクションの存在〜
万年筆の本当の魅力 〜ファーバーカステルクラシックコレクションの存在〜

万年筆は永遠に残るものだと確信しています。
仕事で紙に書くことが激減した現代においても生き残っているし、むしろ万年筆を使いたいという人は増えていると実感しています。
書き味の軽いボールペンも、タブレット端末などに手書きできるペンも、万年筆の領域には踏み込むことができない。
例えば万年筆の魅力が、「文字がきれいに書ける」ことや「書き味が良い」だけだったら、とっくに世の中からなくなっていたかも知れません。
でもそれらは万年筆の魅力のほんの一部分で、私たちが万年筆を使う最大の理由ではないと思っています。

私が思う万年筆の最大の魅力は、それで文字を書きたいと思わせる筆記欲を刺激する存在であるということ。そして、書きたいだけでなく、持っていたいと思わせる魅力があることだと思います。
それは万年筆というモノの魅力という言葉が当てはまりますが、筆記具という存在を超えたものであるから、万年筆は生き残ることができた。
そうやって考えると、ただ書けるとか、書き味が良いという万年筆はもしかしたら将来淘汰されてしまうのかもしれません。

デザインが良くて、なぜか使いたいと思わせる万年筆にファーバーカステルクラシックコレクションがあります。
とてもシンプルなスペックの万年筆で、そのバランスに慣れるのに時間がかかりますが、デザインの良さから愛用したいと多くの人に思われてきた万年筆です。
私もクラシックコレクションエボニーの万年筆とボールペンを、カンダミサコさんの2本差しペンシース に入れていつも傍らに置いて使っています。

万年筆がこの世に登場する前の、鉛筆補助軸をデザインモチーフにしているクラシックさと、硬質なプラチナコートしたスチールと天然の木を使ったモダンさが融合した完璧なデザインだと思っています。
使いたいと思っていつも手元に置いているから使う。使うからどんどん書き味が良くなる。そんな循環が魅力のある万年筆には起こります。
私たち販売員は、万年筆をただよく書けるだけの筆記具として提案してきたことを改めなければいけない。
それは万年筆が将来消滅してしまうことにつながることだから。
万年筆がそれを使う人の心に及ぼす本当の作用について、私たちは伝えることができていませんでした。しかし、万年筆を使う人は自らその作用を見出して万年筆を楽しんでいたから、今まで存在し続けてきてくれた。
否定するつもりはないけれど、コンピュータやタブレットの画面上に書くタッチペンの類いは、様々なテクノロジーで味を再現しているインスタント食品にどこか似ています。
色々な技術で実際に書くことにかなり近づいていて、すごく進化しているけれど、それらがどこまで進化しても万年筆が使う人の心に及ぼす作用は再現できないと思っています。

*ファーバーカステルTOP

関連記事

⇒2011.4.8「フォーマルなボールペン・ファーバーカステル エボニー」
⇒2013.4.5「~使いたいと思わせる存在~ ファーバーカステルクラシックコレクション」

*前の記事「ラマシオンハンドメイド時計イベント~6/22(土)・23(日)」

ラマシオンハンドメイド時計イベント~6/22(土)・23(日)

ラマシオンハンドメイド時計イベント~6/22(土)・23(日)
ラマシオンハンドメイド時計イベント~6/22(土)・23(日)

楽しみで使うものなので考えすぎだと言う人もいるかもしれないけれど、だからこそ万年筆はそれを使う人の生き方や思想を表すものであってほしいと思っています。
でも万年筆というもの自体が、その人の書くということに対する情熱を表しているものなので、実はそれを使っているだけで生き方を表しているのかもしれない。

腕時計も以前は誰もが必ず身に付けているものでしたが、今では付けていない人が多くなってしまいました。そうなると時計を付けているだけで、そこに何らかのメッセージがあるような気がしますが、腕時計にはアクセサリーという要素も多分にあります。
アクセサリーもまた、その人の価値観を表現するものなので、万年筆以上にその人の思想を物語るものだと思います。

こんなことを言うと誤解があるかもしれないけれど、当店で時計を扱いたいと思っていたわけではありませんでした。
時計の世界は、何となく格式張った堅苦しい世界に見えていました。
でも吉村さんはそんな世界の人ではなかった。
様々なオーダーに応えてくれて自分だけの世界で一つの時計を作ることができるのに、その価格は限定万年筆くらいの値段だし、女性ものの可愛らしくもエレガントなものは国産万年筆くらいの値段で買うことができる。
神戸東灘区に工房兼ショールームを構えるラマシオンの吉村恒保さんと、お客様の紹介で知り合うことができたのはとても幸運だったと思います。

量産されている国産のムーブメントを使って、ケースや文字盤などをハンドメイドで作る時計作家としての物作りのスタンスや、構えたところのない自然体の物腰など、共感できるところが多い吉村さんの作品を扱えることで、万年筆やステーショナリーを扱う当店にも奥行きができたと思います。
例えばペリカンの万年筆を使っている人が身に付けるなら、どういう時計が合うだろうかと考える。
ステーショナリーの枠から出て、当店の世界観をお客様方に提案できると思っています。

3月にラマシオンさんのイベントをしたところなのにまたイベントをするのには、そんな当店の想いと、ラマシオンの吉村さんが当店を大切に思ってくれていることが表れています。
時計の世界は万年筆の世界以上の歴史があって、それを商うお店も多く、確立された世界だと思っています。
でも、既製の時計にとらわれずに自由に時計作りをする吉村さんの時計は、その世界を何となく疑問を持って見ていた私の心を動かしました。
私と同じようにラマシオンの吉村さんの時計を良いと思ってくれる人が、万年筆を使うお客様の中にもいると思っています。

*ラマシオンシルバー時計(シルバーアクセサリーの項目に掲載しています)

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⇒2019.2.15「ラマシオンの時計と3月9日・10日のイベントのご案内」

*前の記事「ウォール・エバーシャープ シグネチャー 〜メイドインUSAの魅力〜」

ウォール・エバーシャープ シグネチャー 〜メイドインUSAの魅力〜

ウォール・エバーシャープ シグネチャー 〜メイドインUSAの魅力〜
ウォール・エバーシャープ シグネチャー 〜メイドインUSAの魅力〜

ウォール・エバーシャープシグネチャーの書き味に驚きました。

シグネチャーはウォール・エバーシャープが今年発売したレギュラーサイズの万年筆の新製品です。
強烈な個性を持つオーバーサイズ万年筆デコバンドと比べると、地味な印象を持たれるかもしれませんが、シンプルなデザインがバランスよくまとまっていて、良い万年筆だと思います。
冒頭でも書きましたが、シグネチャーは紙に吸い付くような大変良い書き味を持っています。でもそれは18金のペン先、という理由だけではありません。
ペン先の柔らかさとボディの重量のバランスからくるもので、エボナイトのペン芯もその書き味を生み出すのに貢献しています。
シグネチャーという万年筆全てで、この書き味を作り出しています。

デコバンドのように過去のウォール・エバーシャープのデザインを復刻したというものではないけれど、シグネチャーからは1920年代のシェーファーライフタイム、パーカーデュオフォールドのような雰囲気を感じます。
ボディの大きさに対してペン先が大きく、その比率がそれらに近いのかもしれませんし、シンプルで無骨というのが共通するキーワードだと思っています。
それらを一言で言うと「メイドインUSAらしさ」ということになるのかもしれません。
書き味が素晴らしいとか、バランスが良いことも私たちに喜びをもたらしてくれるけれど、何よりもこの万年筆のアメリカ製らしい骨太に感じるところに私たちは惹かれるのだと思います。

多くの万年筆はウォール・エバーシャープとは反対の、繊細でエレガントな仕立てになっていて、現代のペンにおいてウォール・エバーシャープは珍しい存在となっています。
だからこそ当店はそこに思い入れを持って、ウォール・エバーシャープを直接輸入している。
バランスが良くて長時間書いても疲れないとか、ペン先が18金で書き味が良いという機能性や実用性は、万年筆にとって無視できないことですが、そこで終わってはいけない。
私たちに喜びをもたらしてくれたから、万年筆は今まで生き残ることができた。
その万年筆が私たちの心を動かすことを、お客様に伝えなくてはならないと思います。

それは万年筆だけに言えることではなくて、全ての扱うステーショナリーにおいても言えることなのだと思います。
ただ使用に足りる機能性があるだけ、良い素材を使っているだけでは、きっとだめなのだと思います。
そういうものはいくらでもあるし、もしかしたら100円ショップにもあるかもしれません。
機能を高い次元で満たして良い素材を使っている上で、使わなくても持っていたいとか、気分が良くなるという心への作用について、もっと考えなくてはいけないと思うのです。

万年筆をはじめとするステーショナリーは、楽しみという実用よりも少し高い次元のステージに上がろうとしている。
ウォール・エバーシャープシグネチャーもそんな時代の要求に応えることのできる万年筆だと思っています。

⇒WAHL-EVERSHARP・シグネチャークラシックコレクション

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⇒2018.2.2「ウォール・エバーシャープ入荷しました」

*前の記事「コンチネンタルペンシース 〜便利で使いやすいものから、持っていて楽しいものへ〜」