工房楔コンプロット~オリジナリティのある自然なもの~

工房楔コンプロット~オリジナリティのある自然なもの~
工房楔コンプロット~オリジナリティのある自然なもの~

当店としては定番中の定番で、ないことが考えられなくなっている工房楔の万年筆ケースコンプロットは名作だと思います。
銘木をくり抜いて革の内装を施したコンプロットは万年筆を保管することもできるし、机上に開いて立てて置くと、ペンを一覧しながら使うペン立てとして使うこともでき、実は非常に機能的です。
私はコンプロット以前に、このような万年筆の収納ケースを見たことがなかった。
それまでのケースは箱や引き出しなどで、据え置き型の家具のようなものが殆どでした。
しかし、コンプロットは木製でありながら革製品のような機能性を持った存在だと思っています。
万年筆の補助的な存在の万年筆ケースが多い中で、コンプロットのような個性があって、上質さを感じさせるものは少ないのではないでしょうか。
中身の万年筆に余程すごいものを入れないと、ケースに主役を食われてしまうと思わせるような考え方自体がオリジナリティで、コンプロットの最大の特長だと思い、共感します。
コンプロットも発売して8年が経ちますが、発売当初から変わらず売れ続けているし、永田さんはコンプロットの新作を出し続けている。
オリジナリティがあって無理のない、自然な企画は必ず成功するということを私も今まで何度も見てきましたが、コンプロットはそんな企画のひとつだと思っています。
発売当初は、これが売れるかどうか半信半疑だったけれど、ゆっくりと浸透していった。
お客様というのは本当に有難いもので、そういった企画はちゃんと認めてくれて応えてくれる。

今回のイベントでも永田さんはコンプロットの新作コンプロット6を発売します。
オーバーサイズのペンもしっかり収めることができるケースで、本数よりも1本ずつのスペースに余裕を持たせています。
それはお客様方のコンプロットに対する要望に永田さんが応えて開発したものですが、コンプロットも円熟期に入ってきたことを表す新作なのかもしれないと、少し感慨深く思います。

⇒工房 楔(せつ):コンプロット(万年筆ケース)

関連記事

⇒2009.3.27「Conplotto-10(コンプロット-ディエーチ)」
⇒2011.6.3「工房楔 コンプロット4ミニ完成」

*前の記事「パイロットシルバーン」

パイロットシルバーン

パイロットシルバーン
パイロットシルバーン

万年筆との関りは、大人になってその良さを知ってから変わっていないと思っています。いまだに万年筆で書くことが楽しいし、万年筆というモノの存在が好きでいつも握っていたい。
これを仕事にしているわけなので飽きたら大変ですが、奥深い楽しみのあるものだと思っています。
それに書くことが好きなのでいつも何か書いていたい。次は何を書こうかと、書く必要に迫られていなくても、仕事を離れるとそのことばかり考えている。

自分の生き方を象徴するものとしても万年筆は在って、きっと万年筆店をしていなかったとしても、万年筆は使い続けていたと思います。
でも店をしていなかったらこんなに多くの万年筆を知ることはなかったので、きっと定番的なものを使うにとどまっていただろう。
多くの人が使う定番万年筆ももちろん良いけれど、そうじゃないものの中で良いものを伝えることも、私の役割だと思っています。
そんなひとつとして、パイロットシルバーンを紹介したいと思います。

日本の万年筆において、最近はペン先の大きなクラシックタイプが主流となっています。
シルバーンのようなペン先が首軸に接着されたタイプの万年筆は、同じパイロットのエリート、ウォーターマンカレン、他には廃番になりかけているシェーファーレガシーくらいではないかと思います。そのスペックは、万年筆としての機能にどう関係しているのかは分からないけれど、どれも万年筆の名品だと思います。

ボディエンドを極端に絞った形も、キャップの入りが深いのも、バランスの重心を中心に寄せるという実用的な理由があります。
ペン先の形からか、書いている文字が見やすく、ペンポイントも狙ったところに置きやすい。
実用的に優れた、ひとつひとつのスペックに理由のあるシルバーンですが、私は何よりも、時代に取り残されたようなクラシックな佇まいが好きで、多くの人に共感してもらいたいと思っています。
シルバーンの欠点は、ペンの格に対して使えるコンバーターの容量が小さいということです。それが嫌で、今までカートリッジしか使っていませんでしたが、最近シルバーンに容量が大きいプッシュ式のコンバーター70が普通に使えることが分かりました。
個体差によるもので、たまたま私の使っているシルバーンが使えるだけなのかもしれないし、メーカーは推奨していないので、大きな声では言えないけれど、お持ちの方は試してみて欲しいと思います。
今ペリカンのインクの良さを見直して、そればかり使っているのでその発見に救われましたが、いまだにこんな発見をして大喜びをしています。

遊び心は感じられないけれど、書く道具としての機能のみを追究した誠実さのようなものが感じられる。そんなところも時代遅れなのかもしれないけれど、パイロットシルバーン、いい万年筆だと思っています。

関連記事

⇒2009.1.8「硬派な道具 ”シルバーン”」
⇒2013.7.26「いつも手元に~パイロットシルバーン~」

*前の記事「~木の好み~ 工房楔イベント 3月31日(土)4月1日(日)開催」

~木の好み~ 工房楔イベント 3月31日(土)4月1日(日)開催

~木の好み~ 工房楔イベント 3月31日(土)4月1日(日)開催
~木の好み~ 工房楔イベント 3月31日(土)4月1日(日)開催

信用できるお店というのは、その人に合った良いものを勧めてくれるところなのではないかと思います。
その世界のことにまだ詳しくない人をカモにする店はいつか滅びる。そんな店が成り立っていた時代はとっくに終わっている。
初心者の人に良いものを教えて導いてくれる店、良いものを見分ける目を養わせてくれる店が良い店で、その人が欲しいと思うものだけではなく、合ったものを教えることができる店でありたいと思う。
良いものを勧めてくれる店が、安心して買い物することができる店の第一条件だと思います。
工場で作られる製品は、どれもある一定の基準には達していて、個体差は少ないけれど、木は違う。
木はたくさんの種類があって、はじめはどれが良いのか分からないと思います。
でもその中から、この花梨は杢が細かく入っていていいよとか、このハワイアンコアはちぢみ杢がきれいに入っていて、艶やかでいい個体だよと、工房楔の永田篤史さんは良いものを勧めてくれる職人さんであると思っている。

加工の腕の良さや素材を見極める目利きも木工家にとって大切な条件ですが、信用できるということもまた、不可欠な条件だと思います。
木の見方は本当にそれぞれで、もしかしたらそれぞれの好みがあって、正解などないのかもしれませんが、でも一般的に上杢とされるものは存在する。
工房楔の場合、永田さんにしっかりした基準があって、その基準に見合った杢しか作品にしていないので、どれを選んでいただいても大丈夫だと思っています。

でも色々見ているうちに好みというのはどうしても出てきます。
私の木の好みはかなり偏っていて、それは自覚しているけれど、平たく言うときれいと汚いの間のモノが好みです。
どんなものでもそうかもしれないけれど、完璧なものよりも素材感のある、少し泥臭いようなものに惹かれます。
具体的な木の材名で言うと、ウォールナット、チークこぶ杢などはいかにも銘木という豪華な感じが良い意味でなくて、杢が出ていても控えめな感じがするので見飽きることがありません。
それぞれの木の良否を見る時に基準というか、私なりの判断材料は艶やかさです。
細かく杢などが入っていれば尚良いのかもしれないけれど、油分を感じさせるような艶やかさのある個体に惹かれて、仕入れる時に何か2つで迷った時にはどちらが艶やかだろうかというふうに見て選んでいます。この辺り好みによるところがあるので、こういう選び方もあるのかという参考程度にしていただければと思います。

黒柿やスネークウッドなど銘木の中でも特別なものは特に人気があって、もちろんその中で良いものがあれば手に入れて欲しいけれど、他の銘木でも工房楔が選んだのなら良いものだと、私も自信を持ってお勧めできる。
今回のイベントでもいわゆる高級銘木は出てくるだろうと思います。しかし、地味だと思われているものにも、木を所有する喜びはあるのだと強く訴えたいと思っています。

関連記事

⇒2016.4.8「銘木万年筆軸 こしらえ」
⇒2009.9.18「工房楔 木工家という生き方」

*前の記事「工房楔イベント~3月31日(土)・4月1日(日)~」

工房楔イベント~3月31日(土)・4月1日(日)~

工房楔イベント~3月31日(土)・4月1日(日)~
工房楔イベント~3月31日(土)・4月1日(日)~

今年も工房楔春のイベントを当店で開催いたします。
このイベントを毎回楽しみにして来て下さる方も多く、皆様のお顔を思い浮かべています。
今回の目玉は、こしらえのロングタイプです。
今までのものよりもボディを5mm・キャップを3mmほど長くして、パイロットカスタム743まで使えるようにしました。
スタンダードタイプのこしらえは、工房楔の万年筆ケースコンプロット4ミニに収めることができる長さとプロポーションのバランスなどを考えて、工房楔の永田氏がこだわりを持って導き出したサイズでした。
でも今回はこしらえへの多様な要望を満たすこととバリエーションの拡大を目指して、ボディのロング化と、より大きなペン先に対応したものも作ることにしました。
カスタム743と、従来こしらえに使うことができたカスタム742・カスタムヘリテイジ912とではボディサイズ、首軸サイズ、首軸ネジ径は同じサイズで、ペン先の大きさだけが違っていました。
ですので、カスタム743が入るということは、カスタム742/カスタムヘリテイジ912も入るということになります。

毎回イベントの時に、永田さんはこしらえも新しいものを作って持ってきてくれる。
今回は何の素材があるか、そして新しいサイズ、違うペン先のこしらえの皆様の反応がとても楽しみです。

工房楔のボールペンを愛用して下さっている方々にも朗報があって、三菱ジェットストリームの替芯に、工房楔のボールペンにも入るパーカータイプのものが発売されました。
日本を除く、世界のボールペンの多くが芯にパーカータイプという同一規格のものを使用していて、私たちは慣習的にパーカータイプと言っているけれど、パーカーが最初にその規格のものを使用したからだと思われます。
その規格が世界を席巻していて、簡単に崩せない強固な地盤だと思っています。
パーカータイアのイージーフロー芯もかなり滑らかな書き味ですが、ジェットストリームはさらにサラッとした書き味で、何よりも細く書くことができますので、存在意義は大きい。
いずれにしてもひとつのボールペンで、替芯の選択肢が多いのはとてもいいことだと思います。

万年筆のカートリッジの規格でも同様ですが、日本のボールペンの芯は各社オリジナルで、その規格はガラパゴス化していました。
それは他社と共用されることを避けるための差別化の効果があったかもしれないし、独自性を守ろうとする心意気なのかもしれないけれど、ユーザーにとっては自由度が少なかった。
万年筆でも、私はパイロットのカートリッジがカステルのペンで使うことができたらと考えたりするけれど、筆記具にも、スマートフォンOSのアンドロイドのような、規格共通化の波が来ていて、そこに目を背けては今の時代の激流を泳ぎ切ることはできないと各社考える時代がとうとう来たのかもしれないと思っています。

世界の規格の共通化という大げさな話になってしまったけれど、今年も工房楔春のイベントのご来場お待ちしています。

関連記事

⇒2014.10.31「工房楔とのオリジナル万年筆こしらえ」
⇒2016.9.23「工房楔の名品~使うべき素材を無理なく使い、需要を作り出したもの~」

*前の記事「質感の高さで主張する万年筆~パイロットカスタム743~」

質感の高さで主張する万年筆~パイロットカスタム743~

質感の高さで主張する万年筆~パイロットカスタム743~
質感の高さで主張する万年筆~パイロットカスタム743~

ブランド名や分かりやすい意匠ではない、一見してどこのものか分からないけれど、質の高いものがいいと思うようになりました。
そういうものは意外と少なく、私の身の回りではル・ボナーの鞄や革製品がそれにあたります。
大切な友人だからその作品を使いたいという想いももちろんあるけれど、その質の高さから使う喜びを初めて教えてくれたものでもありました。
海外メーカーの万年筆はデザイン的な特長もありますので、ある程度万年筆を知っていれば、たいていどのメーカーのものであるかは分かります。
そういう主張のあるデザインが特長でもあって、惹かれる部分でもあるけれど、一見どこのメーカーか分からないデザイン的な特長を排した質感の高いものも万年筆にはあって、そういうものも良いと思うことがあります。

日本のメーカーの万年筆の多くがそうですが、その中でも今回は高い次元での質感の高さを追究した万年筆パイロットカスタム743を取り上げてみます。
国産万年筆は、2万円クラスでも実用的に完璧だと思いますが、3万円のカスタム743はさらに上の上質な書き味の良さを追究したものです。
2万円のカスタム742との違いはペン先のみ(ペン芯も含む)で、カスタム743は15号という大きなペン先を備えています。
カスタム743を知って、ペン先は柔らかければいいものではないと思いましたが、それはこのペン先が柔らかさと同時に粘りの強さのようなものを持っていたからです。
それはオーソドックスなFやMのペン先でも使い込めば感じることができるけれど、柔らかさを追究したフォルカンペン先でも顕著に表れます。
フォルカンは、筆圧をかけすぎるとすぐにインクが途切れてしまう筆圧のコントロールが要求されるペン先ですが、同じペン先でもカスタム742より743の方がインクが途切れにくいし、はるかに使いやすい。
最初に感じる柔らかさはあまり変わらないかもしれないけれど、筆圧をかけた時にインクが途切れず踏ん張ってくれる範囲が大きい。
そういう意味では一番カスタム743の15号のペン先の粘りを感じることができると思います。
カスタム743は、デザイン的には一切の特長を排して、無個性であることに徹した実用万年筆で、それを私は超実用万年筆と言えるものだと思っています。
凝った意匠や色柄ではなく、手で感じる書き味、それも特別上質な書き味のみに特長を出した万年筆。
それを使っている人だけに感じることができる、密かな喜びをもたらしてくれるものだと思っています。

書き味の良さを味わいながら、書くことを楽しみたい人から、究極の書く道具を求める筆記試験の受験生の方まで自信を持ってお勧めできる、誇るべき日本の万年筆だと思っています。

関連記事

⇒2011.1.28「カスタム743」
⇒2016.2.12「~書道の先生に作った万年筆~ パイロットカスタム743のスタブ仕様」
*前の記事「グイード・リスポーリ氏の新作カード」