美学に合ったサマーオイルメモノート

美学に合ったサマーオイルメモノート
美学に合ったサマーオイルメモノート

自分が日々書くものは、パソコン打ちしてデータにしてしまうと捨ててしまいます。
書いたものに対してもちろん愛着はあるけれど、それは今の気分、今日の考えであって、明日はそれにこだわらず違う考えに進みたいと思いますので、それらを読み返すことがありません。
何かネタがあって、それをノートに書き留めておく。そしてそれを何かの機会がある時に引っ張り出してくるようなことを何度かしようと思いましたが、書いていて楽しくなかったので、結局しなくなりました。

ノートに書き貯めておくというやり方は自分には向いていない。それよりも頭の中に置いておいて、必要な時にそのネタを拾い上げて、今の気分で紙に書く方が合っている。
原稿を書き記す紙はあくまでも下書きをするためのもので、書き残すためのものでは自分の場合はないようです。

そういう自分の仕事のやり方と、なるべく何も残さないという美学のようなものを合わせて考えると、WRITING LAB.で企画したサマーオイルメモノートほど適したメモ帳、ノートはなく(自分のためのものを発売して使っている後ろめたさは少しはありますが)ぜひ多くの人に使っていただきたいと思っています。

サーマーオイルメモノートには、切り取り線やきれいに折り返せる表紙などの便利な機能はないけれど、趣きを持っているという点では抜群だと自信を持っています。
趣きとは形で言い表すことのできない曖昧なもので、上手く言えませんがステーショナリーのほとんどが機能は完璧でも、趣きを持ち合わせているものがほとんどなのを感じていました。
分かる人には分かるし、分らない人には筆舌を尽くしても共感してもらえないものが、趣きなのかと思っています。

サマーオイルメモノートは、私がル・ボナーさんからいただいた革を加工して、その辺にある紙に穴を空けて綴じていて使っていたのを駒村氏が見つけて、商品化することになったものです。

自分としては完璧なメモ帳で、これを使い出してから他のメモ帳を使いたいと思うことがなくなりましたが、他の人が良いと思ってくれるとは思っていませんでした。
今まで、自分が良いと思うものを企画してきましたが、これだけは難しいのではないかと思っていました。そのためWRITING LAB.で商品化することになったときは、嬉しかったけれど前述しました通り後ろめたかったのです。

でも販売を始めて2年近くが経ち、賛同してくれる人が多くおられることが分かりました。皆さんご自分が使うメモ帳に趣きのようなものを求めていたのだと思い、とても嬉しく思っています。

機能を追求することも素晴らしいことだけど、形のない趣きのようなものを私たちは追究していきたいと思っています。

⇒WRITING LAB.商品一覧

無常の香り

無常の香り
無常の香り

森脇直樹さんが聞香会において炷てる沈香や伽羅の香りを聞いて、一抹の無常感のようなものを感じていました。

その香りから導かれる感情は人それぞれですし、その香りにまつわる想い、記憶は人それぞれあるのだけれど、私はそこに無常の世界観を感じていたのです。
人の気持ちを誘導するのに、香りというものほど優れたものはない。
その香りを嗅ぐと、よりその世界観を感覚で理解できる。

森脇直樹さんも当店の「雑記から」に書かれているけれど、はかなく、でも奥行きのある沈香の香りは武士の一期一会の生き様と合致していて、武士の世界観に取り入れられてきました。
明日をも知れぬ生を宿命として背負っている武士の心に、無常感を思い出させる沈香の香りは沁みこんだのだと思います。

複雑な香りだけれど、飾り気のない自然なままの香りが香炉から薫り立ち、いつまでもその中に身を置きたいと思う。
この世ははかないという無常感は、この時間はいつまでも続かないという諦めのような、でも今を大切にしたいと願う一期一会の心に近い感覚です。
工房楔の永田篤史さんが世に問うている銘木のもの全てに、一期一会の言葉が当てはまると、多くの人が私と同じように感じられていると思います。

杢とか、木目というのは自然が作り出すもので、それを木工家という人間がどう切り取るかでその模様の出方が変わる。
同じ木目を作り出そうとしても絶対にできない。
銘木もたくさんの種類があって、複雑な杢を持つこぶの部分を多く扱うことで、それが工房楔の代表作のように思われがちですが、そうではない静かな印象を持つ東洋の木も工房楔は厳選して扱っています。

そのひとつ黒柿などにも香に近い世界観を特に感じます。
その孔雀の羽根のような模様になることもある墨絵のようなトーン、希少性などから銘木の中の銘木と言われる黒柿。
古から男たちを惹きつけ、追い求めさせたダンディズムのような魅力は、今の我々の感覚でも充分理解できるものです。

簡素の美、素材感など日本古来の感覚を大切にしたいと思って、その価値観に照らし合わせて商品を選び、設え、サービスを選択した当店の当初において、気持ちを導いてくれる香りと嗜みにも似た楽しみを提供してくれる銘木は存在しませんでした。

それらの物は、森脇さんと永田さんのお二方との出会いによって当店にもたらされた、大切にしていきたい当店のひとつの切り口でもあるのです。

*当店では毎月最終土曜日の午後3時~5時に森脇直樹氏による「聞香会(もんこうかい)」を行っています。参加費などは無料ですので、ぜひご参加下さい。カジュアルなスタイルで行っていますので、緊張せずに香に触れていただけると思います。毎月の開催日はホームページインフォメーションにてご確認下さい。

オリジナルフリーデイリーノート

オリジナルフリーデイリーノート
オリジナルフリーデイリーノート

来年の予定が既にたくさん入っている方もおられ、そういった人たちのためにもダイアリーを早く用意したいと思っています。
毎年と同じになってしまいましたが、今年のオリジナルダイアリーの発売は9月上旬の予定になっていますので、よろしくお願いいたします。

オリジナルダイアリーは、当店と分度器ドットコム、大和出版印刷との共同企画で、今回でついに5回目(5年目)の製作になります。
ダイアリーはステーショナリーの中でも、最も継続性が求められる商品だと思っています。もちろん永遠に継続させるつもりで始めたけれど、ひとまず5年継続できてとても有難く思っています。
このダイアリーを買って下さっているお客様方の存在なしでは、続けることができませんし、これを作り続けて一緒に販売努力も負って下さっている大和出版印刷さんにも感謝しています。

上記のダイアリーは、日付入りのマンスリー、ウィークリーダイアリーのことで、1日1ページのデイリーノートは日付を自分で書き込むフリーダイアリーになっています。
毎日書かなくてもいい、書くことがある時だけ記入してもらう。
気楽に長く続けて使っていただけるようにと思っています。

その日の予定、するべきことを管理して、その日にあったことを記録するという、予定帳と日記機能の両立したものを目指しています。
万年筆でダイアリーを書くという楽しみと、充実した1日をサポートできるものになっていると思っています。
デイリーダイアリーの罫線は正方形の紙面を4分割にしてレイアウトしています。
これは何の根拠もありませんが、思考をシンプルな平面的な形にすると、正方形4分割になるような気がして、その形にしています。
正方形という書く紙としては特殊な紙面がこれによって書きやすくなり、時系列で書いた記録を後から探す時、視覚的、直感的に見つけやすいフォーマットだと思っています。
左側の上は、その日にやらなければならないこと、この日の予定を書くことができて、このダイアリーの中で唯一未来について書く部分になっています。
左下MEMO欄は、覚書欄で、キーワードや連絡先など、メモ帳に書くように書き込みます。
ラフに書いても場所が決まっていますので、すぐに見つけて後から活用することができるスペース。
右側の2段は、どちらもドキュメント、記録のためのスペースです。
上段、下段にそれぞれ役割を持たせてもいいし、つないで大きなスペースとして使うこともできます。
ダイアリーを書き込む時、多くの方が細字を使うと思います。
書くスペースに制約がありますし、細いペンで書く方が文字がくっきりして後から読みやすい。
太字に比べると、細字の万年筆はどうしても引っ掛かりが出やすいですが、オリジナルダイアリーの紙は大和出版印刷さんが理想の万年筆用紙を追究して開発した紙、リスシオ1を使用していますので、これもまた書くことを楽しくしてくれる条件のひとつだと思います。
ダイアリーを変えただけで、仕事はそう簡単に変わらないかもしれないけれど、仕事を良くするために1日1日を大切にする役に立つもの、仕事をより楽しくしてくれる役に充分立つものだと思います。
ちなみに正方形ダイアリー用の革カバーは、大和出版印刷さんと同じ六甲アイランドにある鞄店ル・ボナーさんが担当して下さっていて、10月上旬の完成を目指しています。

⇒オリジナル フリーデイリーノート
⇒オリジナル商品一覧トップ(2013ダイアリー)

進化する「こしらえ」

進化する「こしらえ」
進化する「こしらえ」

多くのものを均一に作らなければならない大メーカーの物作りと、職人による物作りとは、根本的な考え方が違うことは言うまでもありません。
質感・エージングともに素晴らしいけれど、個体差のある素材というのは大メーカーの選べないものですが、それを使って、最大の技術で不均一でありながらもそれぞれに魅力を感じさせるのが、職人の仕事だと思っています。

素材的にも加工的にも安全策を取る量産品と、少量製作の職人の品との違いは、使い手の楽しみ方、見方が違います。
職人の仕事に均一さを求めるのはその物の見方が違っていると思うし、量産品の中から個体的に優れたものを求めるのにもどこか無理がある。

量産品だけど許容範囲があって、その中でバラつきがあるペン先をより厳しい目で見て、メーカーに交換を要求する私はメーカーからするとかなりうっとおしい存在だと自覚しています。
ただペン先の優劣はその万年筆に私たちが期待する書き味に影響するから譲れないところですが・・・。

量産品である万年筆を職人仕事のボディと組み合わせたのが「こしらえ」です。
こしらえはパイロットの書き味、性能ともに優れた万年筆、カスタム742、カスタムヘリテイジ912の首軸から先を装着して、使うことができる銘木製のボディです。
書き味の良いことで定評のある国産万年筆におもしろいボディが付いて欲しいという多くの人の願望を実現したものです。
ペン先を刀の刀身に見立て、万年筆のボディを刀の柄や鞘などの装束である拵えに見立てています。
こしらえには、刀身に見合った良い素材と高い技術で作られたものでなくてはなりません。

工房楔の永田さんの素材選びと仕事はそれに見合って、余りあるものだと思っていて、とても良いものが出来たと思っています。

「ボディがもう少し太い方が、キャップとのバランスは良くなりますよ」1回目にこしらえが出来上がって、お客様方からお聞きした内容であり、私も思っていたことを伝えていました。
作り手の都合は全く考えていませんでしたが、永田氏は本気で聞いて取り組んでくれていました。
口で言うのは簡単ですが、一度決まったフォルムを破綻なく構築し直すのは本当に大変だったと思います。

永田氏は努力はしたけれど、それほど変わったとは思っていなかったようでしたが、わずかなボディのふくらみがこしらえにかなりふくよかな印象を与えてくれていて、フォルムの変更が成功していると思いました。
きっと永田氏は私が言わなければボディのアールを変えたことを自分からは言わなかったと思います。
かなり苦心したと、後で告白されましたが、そういうことをアピールしないところに永田氏の職人としてのプライドと奥ゆかしさが感じられ、面白く思いました。

⇒万年筆銘木軸「こしらえ」一覧へ

*画像は花梨リボン杢です

革の深遠な世界の入り口 ル・ボナーデブペンケース

革の深遠な世界の入り口 ル・ボナーデブペンケース
革の深遠な世界の入り口 ル・ボナーデブペンケース

社会人になってすぐに買ったシステム手帳を大切にしていましたが、革の手入れの仕方を知らず、ただひたすらミンクオイルを塗っていたので、表面が固まったようになってしまいました。
油の塗りすぎは革の毛穴をふさいで呼吸を妨げてしまい、革を殺してしまうことになることを知らなかったのです。
それは私にとってかなり辛い、悔いの残る経験でしたので、それ以降靴を含めた革製品の手入れに対して、臆病になっていました。

ル・ボナーの松本さんと知り合って、正しい革製品の手入れの仕方を教えてもらいました。
使い込んで手入れすることで益々良くなる、エージングする革の良さを知ることができましたし、そういう革を私は使っていきたいと思うようになりました。

革の種類やタンナーの存在も知りました。
動物による革の違いや、カーフとかステアなど牛の年齢による原皮の違いは知っていましたが、同じ原皮であっても、そのタンナーの違いなど、なめし方の違いによって様々なものがあることには思い至っていませんでした。
でもそれらの製品になる前のなめされた革も立派な作品であることを知って、革というものの深遠な世界に魅力を感じるようになりました。
それらを知って、違いを味わうことが革を嗜むという、より大人の革の楽しみ方なのかもしれません。

本革製とうたっているけれど、それ以上でもそれ以下でもないもの。私がそれまで見てきた革製品は大切に革を育てながら使うということを教えてくれるものではなかったので、そういう革の楽しみ方があることに気付きませんでした。

名のあるタンナーの名作革は、普通鞄やハンドメイドの革小物などの高額なものに使われることが多く、私たちが最も身近だと感じられるステーショナリーで使われることは、それまでの私の経験ではありませんでした。
しかし、デブペンケースには世界を代表するメジャーな名作革が使われていて、大切に育てるに価する上質な革の扱いを身に付けるのに最適なのかもしれません。

今回デブペンケースに使われた、ブッテーロとシュランケンカーフはともにル・ボナーさんがその製品によく使われるものですが、非常に対照的な性質を持っています。
ブッテーロは張りのある厚みを感じられる革で、油分を多く含んだタンニンなめしの革です。使い込むとかなり表面に光沢が出てきます。
張りはありますが、表面は柔らかいので傷が付きやすい。でも傷がついたらブラシで磨くと、浅い傷なら目立たなくなります。
ブッテーロの革の手入れはブラシ掛けだけでほぼよいのではないかと思っています。
それで艶が出てきますし、キラキラとした表面になって、とてもきれいに変化してくれます。

シュランケンカーフは柔らかいけれど、とても丈夫で扱いやすい革です。
傷や水にも強いのでエージングは少ないけれど、細かいことを気にせずにどんどん使うことができるし、汚れたら水拭きできれいにすることができる。
柔らかいカーフの革を薬品で縮れさせていますので、自然の状態よりも密度が高くなり、丈夫な革になっているようです。

ブッテーロとシュランケンカーフ、形は同じですが革の違いで全く異なるものになっている。
デブペンケースのブッテーロとシュランケンカーフ。
深遠な革の世界の入り口にあるものだと思っています。

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