大和出版印刷上製本ノート 第2弾

大和出版印刷上製本ノート 第2弾
大和出版印刷上製本ノート 第2弾

今回は万年筆ではなく、新しいノートが発売になりましたので、ご紹介いたします。
ノートは用途によって使い分けるものだということは、それぞれのノートを使ってみて分かります。このノートは豊かな時間を過ごすために、製作者が心を込めて作ったものだということが手にするだけで分かります。

誰でも日常の生活の中に何らかの楽しみを見出して、その時間を大切にしていると思います。
それは一日の中では、非常に短い時間かもしれませんが、心を落ち着かせることができ、平凡な日常も悪くないと思わせてくれる時間だと思います。
一日の仕事が終わって家に帰り、夕食など全ての用事が終わって寝るまでの間。それはわずかな時間ですが、落ち着いた静かな時間を持つことができます。
この時間に私が楽しみでしていることは、大和出版印刷の厚い製本ノートにゆっくりと書き込むことです。
大和出版印刷が昨年12月に発売したバガス紙の上製本ノートに、私は思考のノートと名前をつけ、その日一日考えたこと、感じたことなどを書き連ねています。
非常に厚いノートにも関わらず、優れた製本技術のおかげでページ開きがよく、比較的フラットになってくれます。
バガス紙は非常にペンの滑りが良く、気持ちよく万年筆を走らせてくれますし、インクが少しだけにじみますので、私の下手な字に魔法をかけてくれます。
そんな最高のノートと過ごす夜の短い時間はとても楽しく、この時間を過ごすために私は一日何かを考え、感じようとしているのかもしれないとさえ思います。
昨年12月に発売したバガス紙の製本ノートは、完売目前でほとんど在庫が残っていませんが、大和出版印刷は今年も私にとっての思考のノートを製作してくれました。

製本ノート第2弾は、在庫がなくなったバガス紙に代えて、Aプランという紙を膨大な紙サンプルの中から、万年筆に適したものとして選び、昨年と同じ優れた製本と活版印刷によって、シンプルで飽きないノートになっています。
Aプラン紙は、優れた印刷用紙といて既によく知られた紙ですが、万年筆との相性も良く、ツルツルと滑り過ぎない自然な書き味とバガス紙よりもにじみが少ないのが特長です。
細字から中字の万年筆で書くと、とても気持ちよく使うことができると思います。
400ページ弱というとても書き応えのあるノートですが、夜の心のゆとりができた時間に開いて、自分の考えを書いたりするのに最適なものだと思います。
毎日に平凡な生活の中に、宝物となるような特別な時間をもたらしてくれるノートだと思っています。

*画像は実際に使用しているノートです。(吉宗使用)

大和出版印刷上製本ノート

シェーファー VLR

シェーファー VLR
シェーファー VLR

シェーファーは、1920年代からパーカーとの壮絶なシェア争いをして、素晴らしい万年筆を作り続けた万年筆の黄金時代を築いたメーカーです。

シェーファーの1920年代後半の製品のひとつライフタイムをお客様に見せていただいたことがありますが、奇をてらわない寸胴の太いボディと惜し気もなく金を使った分厚く大きなペン先のとても堂々とした万年筆で、それは当時ライバルとしていたパーカーデュオフォールドに対抗するに余りある素晴らしいものでした。
PFM、クレスト、タッカウェイ、コノソアールなど、お客様が見せてくださるシェーファーの歴代のペンについて考えてみると、流行に流されない独自の物作りがとてもユニークだと思いました。
最新作VLRにも採用されている、首軸にペン先を埋め込んだ形を「インレイドニブ」と言いますが、1950年代終わり頃から作られている他社には見られないシェーファー独自のもので、このペン先を一目見るだけでシェーファーだと分かるくらいです。
あるメーカーの製造担当の方から聞いたことがありますが、インレイドニブのようにペン先を首軸に埋め込む技術は非常に難しく、他社にはなかなか真似できないものなのだということでした。
シェーファーが今から50年前にはこの難しい技術を確立し量産して、タルガ、インペリアル、レガシーや最新作VLRに採用しているのです。
インレイドニブの特長は、首軸、ペン先が一体になっていることの安定感、ペン芯を首軸に内蔵していることのインク乾きへの強さがまず挙げられます。
首軸と一体になっているペン先の書き味は、かなり硬いしなやかさのないものに思われますが、シェーファーはペン先を上に反らせることにより、ペン先を開きやすく、少しでも柔らかく書けるように工夫しています。
大きなペン先が高級万年筆の条件のように思われていますが、シェーファーはそれに流されず、独自のスタイルを貫いているところにこの会社の価値があるのかもしれません。
全長はかなり長い方で、ペンの中央付近を持って書く人、寝かせて書く人、あるいはキャップを付けずに書く人にはとてもバランス良く使うことができるペンで、ある程度寝かせて書くことにペン先の角度が決まっているような気がします。

インレイドニブの印象があまりにも強く、デザイン的に今までのシェーファーのモデルとあまり変わったように感じられないVLRですが、デザインをドイツの会社に依頼しています。
どちらかというと、少し無骨な印象のあったシェーファーを現代的でスマートなデザインに仕立てています。
あまりにも独特な存在のシェーファーVLRは、自分の好きなものがはっきりと分かっている人に好まれるようで、この万年筆を使っている人は他の万年筆もとことん使った結果、ここに行き着いたという人が多いようです。

シェーファーVLR

柘製作所 キャンパスマイカルタ

柘製作所  キャンパスマイカルタ
柘製作所 キャンパスマイカルタ

喫煙具などのお店でパイプを見たり、喫煙具を営む方とお話させていただいた時など、柘製作所の名前が必ず出てきます。
それほど柘製作所は喫煙具の世界ではビッグネームであり、成功している会社です。
柘製作所で知ったパイプの、万年筆とは比べものにならない400年以上の歴史と文化は、優れた素材の追求、クラフトマンシップの存在によって支えられ、受け継がれてきたことを教えてくれましたし、パイプに使われている素材の耐久性、エージングの美しさを見せてくれました。
パイプメーカーがパイプに使っている素材は、人間の皮膚に触れた時のフィーリングと長い年月愛用することのできる耐久性があることは、パイプの歴史が証明しています。
そういった素材たちは、使って手の油を吸わせた後、磨き布で艶を出すという楽しみを持っていて、それが厳選された美しい木目を持つ素材であるなら、その喜びは一層強いものになるのかもしれません。

万年筆の世界でも、木軸のものはたくさんありますが、上質な木目の美しさが追求したものは少なかったと思います。
木という天然の素材を使っているということ、使い込むと艶を増してくるということは言われていましたが、その材料自体の等級はあまり問題にされていなかったように思うのです。
柘製作所では、ブライヤーなどの素材が入荷した時に等級をつけて分類しています。
同じ素材であっても、等級によって価格が何倍もの差がつくということ知ると、等級の違いがその木目の美しさにどれだけ影響するか想像することができます。
たくさんある素材の中からパイプメーカーのプライドをかけて、最高の素材で作った万年筆が柘製作所の万年筆のシリーズ「富士」です。
世界で一番美しい、日本一高い山の名をそのシリーズ名に冠したところに柘製作所の思い入れと自信がうかがえると思います。

富士のシリーズは柘製作所が万年筆にも最適な素材とした選んだもの数種類が使われています。

◎ブライヤー
パイプの素材として最も代表的な素材です。柘製作所が豊富にストックしているブライヤーは、細かい杢がたくさん入り、目が密でグレードが高いものになっています。
ダークブラウンのボディに対して、少し柔らかい光を放つ銀メッキの金具を組み合わせ、パイプ作りのセンスが感じられる逸品に仕上がっています。

◎黒檀
ここまできめの細かい真っ黒なものはすでに入手困難と言われているものを使用しています。
24金メッキの金具とのコンビネーションにより、一見スタンダードな万年筆に見えますが、手に取ると上質な黒檀だということがすぐに分かります。

◎マーブルエボナイト
古き良き時代の万年筆にも使われていた、私たち万年筆業界の人間にとって憧れの素材です。
パイプではこのエボナイトを吸い口の部分に使用していて、手触りの柔らかな感触が楽しめます。日々磨き上げることのよって、美しい光沢を保ってくれます。

◎キャンバスマイカルタ
コットンを樹脂で固めたもので耐久性が高いため、切削は困難を極めますが、吸湿性がありますので手にフィットし、実用的には大変優れた素材です。
樹脂ですが、その感触は革に近く、手汗などを吸って変化してくれるエージングを楽しむことのできる素材でもあります。

「富士」のシリーズは柘製作所とセーラー万年筆のコラボレーションによって作られていて、すでに定評のあるペン先のメカニズムや構造、デザインなどセーラーのものを使用していますが、最高の素材を使うことによって、使って、見て、磨く楽しみのあるとても贅沢な万年筆に仕上がっています。
キャップリングをボディ素材と共にするという細心のこだわりを感じると、柘製作所製万年筆を所有する喜びが一層高くなると思います。

*柘製作所万年筆の取り扱いについて

中屋万年筆 シガーモデル

中屋万年筆 シガーモデル
中屋万年筆 シガーモデル

中屋万年筆の漆塗りのモデルは、他のどの万年筆にも似ていないオリジナリティのあるスタイルを持っていて、今大変人気がありますが、今までなかったものを作るのは相当な勇気が必要だったと思います。
万年筆が売れなくなって、大量生産品は黒いボディに金の金具という定型の形に戻らざるを得なかったことに危機感を感じたプラチナ万年筆が少量生産で、より物の良さが分かる人のために万年筆を作りたいという狙いで中屋万年筆をスタートしたのは2000年です。

当時、海外の限定万年筆のブームが高まっていて、それらは日本にもたくさん入っていて、日本の万年筆は一部のものを除き、書き味以外に対抗できる要素がありませんでした。
創業当初、中屋万年筆はプラチナと同じセルロイドの万年筆、ブライヤーの万年筆、そしてエボナイトの素地をそのまま使用したオリジナル万年筆だけで、中屋万年筆も創業当初から今のスタイルが確立されていたわけではなく、それは少しずつ出来上がっていったものだと私は感じていました。

技術もデザインも全てがプラチナから譲り受けた、あるいは借りてきただけのもので、特長と言えば使い手の書き癖を判断してカルテにし、調整するというところのみでした。
新しい万年筆ブランドが立ち上がっても、特長が調整だけというのは心許ないスタートでしたが、中屋万年筆には客様の声が作り手に直接届くクリニックという強みがありましたし、メールの問い合わせには中屋万年筆の社長が直接当たりましたので、お客様がどういうものを求めているのかを全員が生の声として把握することができたのだと思います。

そういった声を小規模で小回りが利く中屋万年筆は実現可能でした。
お客様方の意見を参考にしたのか、中屋万年筆のオリジナルモデルは少しずつ進化し、それはデザイン担当の吉田紳一氏の加入と同時に、一気に形になっていったのは偶然ではないと思います。

そんな中屋万年筆のデザインアイデンティティを最も現しているシガーモデルは、クリップもキャップリングもない、とても潔いデザインです。
万年筆のクリップというのはポケットに差して固定する以外には転がり防止という役目がありますが、デザインにおいてはポイントにも制約にもなっています。
このクリップをなくしたことで、シガーモデルの流麗なデザインが可能になり、今までの万年筆のデザインを超越したものにしています。
シガーモデルにはロングとポータブルという2つのサイズがあります。
ロングは全長163mmで、尻軸にキャップをつけなくても十分な長さがあり、ボディだけで143mmという普通のペンが尻軸にキャップをつけたサイズに近くなります。

キャップをつけなくてもバランスが良いというのは、書くことにおいて思った以上の恩恵があって、重いキャップをつけない自由自在に扱える感覚はデスクペンに近いと思います。
ポータブルはペンケースにも入るサイズで、全長が149mmです。
キャップを尻軸につけることも可能ですが、キャップをつけずに立ち気味の角度で出先でどんどん使うというような使い方が向いているようです。
この2つのシガーモデルはボディサイズ以外に、首軸の長さが違っていて、ロングは首軸を握って使い、ポータブルは太めのボディを握って使うことになると思います。
中屋万年筆のペン先はプラチナと共通(刻印違い)で、その書き味などは同じです。

インク出の少なめの細字はカッチリとした文字を手帳やノートに書くのに適していて、中字以上はインクの出る量も多くなりますので、ノートや便箋などその太さに見合った使い方になります。
ペン先が硬いというイメージの強いプラチナ(中屋万年筆)の書き味は今ひとつと思われていますが、それは使ったことのない人の先入観で、本当はその硬さゆえの気持ちいい滑りを持っていますので、中屋万年筆でも書くことを十分楽しむことができます。

中屋万年筆の漆塗りのペンは大切に仕舞っておいて一年に一度使うお正月の重箱ではなく、毎日必ず使うお椀のような存在だと思います。