~スローなペンシル~ヤード・オ・レット ディプロマットペンシル

ペンシルも使いだすと万年筆にはない良さがあって、いいものだということはわざわざ言うまでもありません。

私は万年筆を原稿の下書きにも使っているけれど、万年筆はどちらかというと清書のための筆記具で、ペンシルは下書きのための筆記具だと思います。

消しゴムで消すことができるということもあるけれど、私の場合は考え込んで筆が止まっても乾かないということと、書いた文字が万年筆ほど強く残らないので、気楽に書くことができるし、たくさんの人が周りにいる状況、電車の中や喫茶店の中でも気後れすることなくノートに書くことができる。そう思って最近では万年筆と使い分けてペンシルも使っています。

台湾のレンノンツールバーの水色という非常に淡い色のインクを下書き用に使ってから、ペンシルに自然に移行したのは、やはり乾かないことが重要だったのかもしれません。

下書きという、どちらかと言うと私にとっては苦しい作業ですが、ペンシルも良いものだと気付かせてくれました。

文具店で勤務していた時から12年も経っていて、特に国産のシャープペンシルのすさまじい進化に気付いていませんでした。

芯が折れない機構というのは結構通常のスペックになっていて、自動的に芯が出てくる、芯が尖ったままであり続けるといった機能のものが発売されていました。

シャープペンシルと言えば低価格帯だったのも、今では数千円の価格のものが売れていたり、取り巻く環境は変わっていました。

ヤード・オ・レットはそういった流れの頂点に君臨できるペンシルですが、日本製の流行しているペンシルとは、真逆の存在なのかもしれません。

クラシカルなデザインのペンが多いヤード・オ・レットですが、このディプロマットは六角形で、シャープでモダンなデザインになっています。

スターリングシルバーの重厚なボディと、1.18mmという太芯を12本収納することができる繰り出し式の内部機構は、職人仕事で作られています。 

プラスチックの部品がひとつも見当たらないのも、ヤード・オ・レットの徹底しているところで、現代の筆記としては稀有な存在です。

メカの面白みがこのペンシルの最大の特長ですが、太芯を好きな長さだけ出して書くことができるのは繰り出し式ならではで、そのブレのない筆記感はヤード・オ・レットならではのものです。

ヤード・オ・レットは1934年、レオポルド・フレデリック・ブレンナーによって設立されました。この年にブレンナーは今のヤード・オ・レットの特長であり、名前の由来になっている3インチの芯を12本収納して、1ヤード分の芯を保持することができるペンシルの特許を取っています。

特許取得と並行して、1822年から繰り出し式のペンシルを製造していたサンプション・モーダン社のパテントも取得し、早くから現在のヤード・オ・レットの形を完成させています。

多くのペンが流行によってその姿を変えて、今に至っていることを考えると、全く変わらずに今も存在し続けているヤード・オ・レットのペンシルは貴重な存在だと言えます。

頭の中で出来上がったものを一気に紙に書きだすような時は万年筆の方がそのスピードについてきてくれるけれど、考えながら書き進める時は、ペンシルがその思考の遅さに付き合ってくれるようで合っている。

ヤード・オ・レットディプロマットはそんな使い方にぴったりな、スローなペンシルだと思います。

当店のペン先調整の説明

ホームページのデザインをリニューアルして、ペン先調整の表現を少し変更しました。

今まではインターネットで万年筆をお買い上げいただく時に、調整方法を「標準調整」「おまかせ調整」「オーダー調整」の中からお選びいただいていましたが、それを無くしました。

何を選択しなくても、全ての万年筆を当店の理想的な形に仕上げてお送りいたします。

よりご自身の書き方やお好みに合ったペン先調整をご希望される場合は、コメント欄にご要望をご記入下さい。ご要望に沿って調整致します。

万年筆は工業製品なのに、そのペン先は1本1本違い、同じものはほぼありません。

私はそういうところが好きで、自分の仕事のやりがいを感じています。

たくさんのペン先の中から書きやすいものを選ぶこともできますし、書き方を見ることができれば、その人に合うものを選ぶことができます。

自分の理想でない形のものは手を入れて、なるべく自分の理想とする形にして、皆様にお届けするようにしたいと思って、今回の変更となりました。

私の理想とするペンポイントの形はルーペで見た時に美しいと思える形です。

その形は様々で、球形のものにも四角いものにも美しいと思えるものがあります。ひとつに決まっているわけではありませんが、自分が手を入れて調整したからには、後から自分が見た時に美しいと思えるものにしたいという想いが強くなってきました。

ペンポイントは美しい形で、切り割りは適度に寄っていて、食い違っておらずペン芯にしっかりと密着していること。左右非対称なものや、筆記面を削り過ぎたもの、開き過ぎたものは美しくないと思っています。

ペン先調整の理想を言い過ぎると頑固なようで、お客様方が遠慮してしまう恐れがあるかもしれません。

でも私にこういう風にしてほしいという要望をお伝えいただきましたら、ご要望と自分の理想の折り合いをつけたものにしたいと思っています。

ペンポイントが美しいかどうかなんて、殆どの人が気付かないことなのかもしれませんが、ペンポイントは美しいものであった方がいい。

それは書き味の良さにもつながり、それが当店の万年筆の特長だと思っていただけるようにしたいと思います。

ペン先の力

趣味の文具箱最新号vol.52で、パイロットポスティングペン先を取り上げました。

ポスティングというのは極細のペン先をお辞儀させて、ペン先を硬く開きにくくすることで、文字の太さが筆圧の影響を受けにくくして、安定して細い文字を書けるようにしたペン先です。

システム手帳リフィル筆文葉・そら文葉のデザイナーかなじともこさんにお願いして、ポスティングペン先の万年筆で書いているところを撮影して、そのページで写真も載せていますが、この時にポスティング万年筆の小さな文字を書く力を改めて知りました。

写真を見ていただければ分かりますが、3ミリ方眼に漢字やかな1文字を入れて書いています。これを書ききったかなじともこさんがすごいのはもちろんですが、それに応えることができる万年筆の細く書く力を感じました。

ポスティングのペン先は、パイロットカスタム742、743、カスタムヘリテイジ912などのレギュラーサイズの万年筆についていて、手帳のペンホルダーに差して使えるタイプの万年筆ではないけれど、この細く書く性能は究極の手帳用の万年筆だと言っていい。

他にもペン先にこだわった万年筆として、セーラーの長刀研ぎペン先というものもあります。(*長刀研ぎ万年筆は実店舗限定商品で、WEBショップに載せることができませんが、店頭に在庫しています)

ペンポイントを長刀形状に先端を鋭く研ぎ上げて、立てて書くと細く、寝かせて書くと太く書けるようにしてあります。書き方によって、筆文字のような鋭いハネ、ハライを書くことを目指したペン先です。

このペン先は多少の慣れが必要ですが、使いこなすこと、書くことをより楽しくしてくれる、セーラーの伝説の職人長原宣義さんが現代に甦らせた、ペン先の研ぎです。

ポスティングも長刀研ぎも、世界の万年筆とは違った日本独特の万年筆のあり方を示したもので、こういう世界観の万年筆を大切にしていきたいと思っています。

私もペン先の研ぎの美しさにはこだわっていますし、こういうことを追究することも生涯の仕事だと思っている。

ほとんどの人が気付かないかもしれないけれど、ルーペで見た時の姿は滑らかで美しい姿であってほしい。美しいペンポイントを持つ万年筆は、きっと適度なインク出で、書き味が滑らかだと思っています。

国産万年筆の書き味

万年筆というものはそれぞれの国柄が表れていて面白いものだと思っています。イタリアのメーカーはイタリアらしい万年筆を作るし、ドイツのメーカーの万年筆はドイツらしいものに感じます。日本の万年筆も同様です。

そして、その国が発展期にある時、経済とか情勢と無関係に思われる万年筆も比例して活気があることはさらに面白いことだと思います。

1920、30年代のアメリカ、1950年代のドイツ、1960年代の日本、そして今の台湾というように、国に勢いがある時ちゃんと万年筆も黄金時代を迎えている。

そのように考えると日本の万年筆はピークを過ぎているということになるけれど、より成熟した存在になっているという言い方、捉え方ができます。

そして、それこそが日本の万年筆の生きる道であるけれど、私たちはそれを海外のお客様方に伝えられずいるような気がします。

日本の万年筆は、海外の万年筆のようにデザインに分かりやすい個性があるわけではないけれど、書き味に違いがあって、それはデザインの違いよりもより、深い万年筆の楽しみ方だと思っています。

私も分かりやすいデザインの違いよりも、微妙な書き味の違いを感じたり、自分が好きな書き味を味わいながら筆を滑らせている方が楽しい。

今この手元にパイロットカスタム74とセーラープロフィット21という実用本位の万年筆があります。どちらも私にとっては非常に書きやすい。

同じ書きやすいでもそれぞれ違いがあって、パイロットカスタム74はどんな筆記角度で書いても同じように滑らかに書ける。大きなペン先のカスタム743ほどではないけれど、書き味も非常に柔らかい。

セーラープロフィット21は、カスタム74に比べて芯のある書き味。快感はカスタム74の方が上だけど、もしかしたらプロフィットの方がきれいな文字が書けるのかもしれません。

書き味を味で例えると、甘口のカスタム74、少し辛味のあるプロフィット21といったところかもしれません。

日本の万年筆メーカー3社、パイロット、セーラー、プラチナの書き味にはそれぞれ個性があり、その書き味こそがそれぞれのメーカーからのメッセージがあって、世界的に見ても日本のメーカーのそれぞれの書き味には個性があり、大いに存在価値があると思っています。

メーカーを横断して、それぞれを比較したり、特徴を挙げたりすることができるのは複数のメーカーを扱っている専門店だけなので、専門店は日本の万年筆の繊細な書き味の違い、味わい方を伝える責任があります。

そして、調整士の仕事は、各メーカーの個性的なこの書き味を引き出すことなのだと思います。

日本の万年筆の分かりやすいデザインの部分、例えば蒔絵や漆塗りのペンだけが海外の人に伝わって、評価されているという現状を変えないと、日本の万年筆は正しく評価されているとは言えないのかもしれませんが、書き味の微妙な違いを伝えることはなかなかに難しいことなのかもしれません。

調整士がペン先調整によって理想の書き味を追うことができるのは、いくつもの理想の書き味を知っているからです。

それを私は微妙な書き味を持った日本の万年筆で覚えました。

誰に聞いても、海外でペン先調整を仕事にしている人は、ほとんどいないと言います。

同じ字幅なのに硬いものと柔らかいものがあったり、中字と細字の間に中細がある国に生まれたから、より完璧な書き味を求めるようになった。

日本の万年筆の書き味の違いを伝えるとともに、ペン先調整で万年筆が書き味を引き出すことができるということを伝えていかなければならないと思っています。

PENLUX~台湾のモノ作りとデザインの力

台湾の万年筆メーカーPENLUXを新たに扱い始めました。
10月に台南ペンショーに行った時に、一目見て気に入ったブランドでした。
短期間ですが12月上旬までは当店が日本国内で先行発売することになっており、先日の神戸ペンショーでも多くの方に良い評価をいただきました。

PENLUXは1999年に創業したメーカーで、日本や欧米のメーカーのOEM(相手先ブランドでの生産)製造をする会社でしたが、今回自社ブランドによる初の万年筆グレートネイチャーシリーズを発売しました。
奇をてらわずにオーソドックスなデザインで仕上げたことと、信頼性の高いピストン吸入機構を備えた万年筆であるということに好感を持ちました。
無色の摺りガラスのような仕上げのクラウディベイは388本の限定品です。

14金フレックスは、ペン先に切り込みを入れて、非常に柔らかい書き味です。
最近の他社のフレックスニブやパイロットのフォルカンニブとは狙っているところが違っていて、ペン先が開いて幅広い字幅で書くのではなく、ビンテージの万年筆のような柔らかいタッチを得るためのペン先、という感じです。
他のフレックスでないモデルは、当店が特別に金ペン先仕様を依頼して用意してもらいました。これだけ立派なボディ、丈夫な吸入機構を備えた万年筆なので、金ペン先が合うのではないかと思ったのです。
もちろん元々はスチールペン先仕様ですので、お申し付けいただければそちらの仕様でもご用意できます。価格はクラウディベイ切り込みありスチールペン先モデル25300円(税込)、他モデルの切り込みなしスチールペン先は24200円(税込)です。

先日、台北を中心にステーショナリーや万年筆店を中心に見て回ってきました。
そんな中、印象付けられたのは台湾のデザイン力でした。
店作りやディスプレイの仕方が斬新で、大胆で、日本にはないものを多く見ました。
ステーショナリーや万年筆の分野で日本は台湾に先行したかもしれないけれど、私たちは過去の栄光に捉われて、時代に取り残されているのではないかと思いました。
台湾はすでにもっと先に進んでいます。
日本製のモノの品質の高さは自他ともに認めるところではあるけれど、同等のモノ、もっとデザインの良いものは台湾で作ることができる。
日本が今後も万年筆を作り続けたいと思うのなら、不採算だけど文化の貢献のために万年筆の製造を継続しているというスタンスではなく、万年筆が自分たちの仕事で将来もこれで生きていくという気概を見せる必要があるのではないかと、日本で万年筆の仕事に携わる者の一人として思いました。
万年筆というものの文化性に甘えてはいけない。万年筆も先に進まなければいけないとPENLUXから大いに刺激を受けています。

⇒PENLUX(ペンラックス)一覧へ
*現在項目がないため、Pen and message.オリジナル項目に入っています

神戸ペンショー

明日(11/23)明後日(11/24)の神戸ペンショーに当店も参加いたします。
地元神戸で開催される、ナガサワ文具センターさんとy.y.penclubさんが主催するペンショーなので立ち合いたかったけれど、昨年はペンショーの会場から近くにある当店に来られる方が多かったので、今回私は店番をすることになりました。
今回のペンショーでも、お客様に好まれそうなものをご用意して持っていきます。

江田明裕さんのガラスペンは、アクセサリー作家でもある江田さんのセンスのよる軸が魅力ですが、実は書き味にもこだわりがあります。
顕微鏡で確認しながら、ペン先をパイロットの字幅に沿った太さに仕上げられていて、従来のガラスペンというイメージを覆す書き味になっています。

台湾の万年筆メーカーPenlux(ペンラックス)は日本初登場で、当店が先行販売となります。
シンプルなデザインですが、万年筆好きの心を惹く仕様になっています。作り込みが感じられるオリジナルの吸入機構、書き味の良いペン先が特長で、本格的な万年筆です。

紙製品はオリジナルダイアリーとシステム手帳を中心にお持ちします。
正方形のオリジナルダイアリーは、カンダミサコさんが革カバーを作って下さり、何とかペンショーに間に合わせてくれました。

システム手帳リフィルバイブルサイズ筆文葉、M5サイズそら文葉を作っている智文堂のかなじともこさんは、ペンショー中当店ブースにおられ、自作品の販売を担当してくれます。イベント限定の商品も製作予定で、今頃は最後の追い込みで頑張っていると思います。
万年筆に関しては、当店スタッフ森脇 直樹がペン先調整を担当します。お持ち込みの万年筆の調整も承りますし、隣のブースの台湾の万年筆メーカーツイスビーのものも森脇がより書きやすく調整いたします。

友人である590&Co.(コクエンアンドコー)さんを神戸ペンショーに引っ張り出しました。モトコーにあるお店ができたばかりなので、より多くの人に知ってもらって知名度を上げてもらえるのではないかと、お節介ながらお誘いしました。
とてもセンスが良くて、素晴らしいお店作りをされているので、それはペンショーでも発揮されるのではないかと期待しています。
こういう華やかなイベントは苦手ですが、当店なりに神戸ペンショーを盛り上げたいと思っています。 関連記事

*前の記事「ブッテーロ革のペン置き」

ブッテーロ革のペン置き

当店のことを、私が良いと思ったもののみを扱う万年筆・ステーショナリーのセレクトショップだと思われているかもしれないけれど、私は自分の狭い了見や偏った好みだけで、モノの良し悪しを決めてはいけないと思っています。
自分が良いと思わなくても売れるものはたくさんあるし、自分が見出せなかった良さを他の人が見出してくれることもよくあるからです。
こういうことを今までたくさん経験してきたので、商品について、特に取り扱いをするかどうかを自分の価値観だけで決めてはいけないと肝に銘じています。
あまりにも自分のポリシーから外れるものは別ですが。

最近私がその良さを見抜けなかった商品が、カンダミサコさんの「ブッテーロ革のペン置き」でした。
ブッテーロの革を2枚重ねにし、折り曲げて固定したとてもシンプルな仕様のものです。
あまりにもシンプルで、今までの職人仕事に対する固定観念がある私にはその良さが分からなかった。 でも販売し始めて、その良さに気付きました。

よくあるようなペントレーではなく、このくらいシンプルなものの方が今の人の感性に合っているのかもしれません。定位置を作って机の上に置いておいて使うのではなく、何か書き物をする時に取り出して使う、あるいは出先で使うような用途がこのペントレーには合っています。
本当に何が売れるか分からないと言うとカンダさんに怒られるかもしれない。

万年筆の固定観念に捉われていないし、今もフレッシュな感性を保ち続けているカンダミサコさんですが、安い革で作れば値段も安くできて売れやすくなるけれど、良いものにこだわっていて、革の質を落とすことはありません。
デザインやモノのあり方は変わっていくものなのかもしれないけれど、それは変わらないことだと思う。

安い革とそうでない革の違いについて述べるのはなかなか難しいですが、手触り、色味など、基本的な質感の高さが違います。
このペントレーもブッテーロの革を使用していて、その滑らかな手触り、使っていくうちに出てくる艶などの変化が楽しめるのはこの革ならではのものだと思います。
ブッテーロは植物由来のタンニンなめしをされた、自然な質感のある油分を多く含んだ革です。
ブラシや布で磨いたり、手で触れることで油分が表面に艶を作りますし、小さな傷なら磨くことで目立たなくすることができます。
そんな上質な革との付き合い方は変わらずに教えてくれるものでもあります。

⇒カンダミサコ「ブッテーロ革ペン置き」 関連記事

*前の記事「ペリカンM600バイオレットホワイト~ペリカンの庶民性~」

ペリカンM600バイオレットホワイト~ペリカンの庶民性~

ペリカンM600バイオレットホワイト~ペリカンの庶民性~
ペリカンM600バイオレットホワイト~ペリカンの庶民性~

発売延期になっていたペリカンM600バイオレットホワイトが入荷しました。
ペリカンはこのM600ホワイトで、伝統的な形と縞模様をベースに、今まで万年筆になかった明るい色で仕上げるという手法を取り入れ、鉱脈を掘り当てたと思っています。
次は何色が出るだろうと多くの人がこのシリーズに期待しているし、こういう万年筆のあり方もいいなと思わせてくれます。

私は今のペリカンの気取ったところのない、使う人のための万年筆というあり方が好きで、それをペリカンの庶民性という言葉で表現できると思っています。
万年筆は貴族のためのものという趣のものが多く、私たちはその趣向とか世界観など、手の届かない世界に憧れて、それらの万年筆を手にすることによって少し近づいたような気分になります。
でも実際に私たちは貴族のような生活をしていないし、自分たちが働かなければ暮らしていけない。
そんな私たちが背伸びすることなく使うことができる万年筆で、ペリカンは私たちのための万年筆だと思えます。

今の万年筆の業界が衰退せずに多くの人の興味を引いていられるのは、万年筆を愛用しているお客様方がSNSなどで情報を発信していたり、私たち販売店が微力ながら活動したりしているからですが、ペリカンの存在も大きいのではないかと思っています。
当店もペリカンによって助けられました。
ペン先調整をする万年筆店として12年前に開店しました。
理想的な機能性を持つ万年筆として、ペリカンM800を当時からお勧めしてきましたが、少し手を掛けて調整すると、ペリカンはさらに書き味が良くなる万年筆で、当店にはまさにお誂え向きの万年筆でした。
今回発売されたM600バイオレットホワイトも、ペリカンらしい書き味の良い、使うための万年筆に仕上げることができます。

ペリカンM600バイオレットホワイト発売に合わせて、カンダミサコペンシースの人気色エッグシェルにバイオレットステッチを施したものを作りました。
M600バイオレットホワイトと合わせてお使いいただくと、より楽しくお使いいただけると思います。

⇒Pelikan 限定品スーベレーンM600バイオレットホワイト
⇒カンダミサコ PelikanM600バイオレットホワイト用1本差しペンシース

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*前の記事「20色キャップレス発売とミツロウダイアリーカバー」

20色キャップレス発売とミツロウダイアリーカバー

20色キャップレス発売とミツロウダイアリーカバー
20色キャップレス発売とミツロウダイアリーカバー

春のパイロットの展示会で発表されたキャップレスデシモ限定20カラーズの第1弾の5色が入荷しました。
今回の10月、来年2月、7月、12月の4回に分けて20色を発売するという壮大な計画です。
定番の艶のある仕上げのボディもいいですが、このシリーズはブラシ加工が施されたメタリックなボディで、現代的で洗練された印象です。

私は暗めの色が渋くて売れると思っていたけれど、今のところ明るめの色が売れています。
キャップレスデシモはアルミ製のボディで軽く、細身になっているので女性の方には非常に使いやすいと言われます。
意外な感じがするけれど、神戸の書道会の先生方の間でキャップレスデシモがもてはやされたことがありました。文字の形を気にしながら1画ずつ書くのに軽いボディと、小さいけれど柔らかいペン先が貢献しているのだと思います。
キャップレスデシモがペン先がノック式で出てくる便利な万年筆というだけでなく、美しい文字を書くのに役立つ万年筆でもあるということを証明した出来事でした。

キャップレスデシモもそうですし、ペリカンM400もその代表的な存在ですが、当店は女性のお客様に使っていただけるステーショナリーをなるべく揃えたいと思っています。
当店が提案する素材や作りの良いものを理解して下さり、発信する情報に鋭く反応してくれる大人の女性たちにも、当店は支えられているとよく思います。
もう10年も作り続けている大和出版印刷さん、分度器ドットコムさんとの共同企画である正方形のオリジナルダイアリーも、そういった女性の方にもお使いいただきたいと思い、写真作品のポストカードやカレンダーで作られているSkyWindさんにミツロウ引きのダイアリーカバーを作っていただきました。

オリジナルダイアリーは、システム手帳よりもウィークリーもマンスリーも1日のスペースが大きく、大きめの文字で書くことができますので、小さな文字が読み辛くなった世代にも使いやすい。
私も忙しい日が続いた後など、特に小さな文字は読みにくく思うようになってきましたのでよく分かります。
特にマンスリーダイアリーは一見してすぐ分かるカレンダーのレイアウトで、仕事別に分けて持っても良いと思うほど薄くて携帯しやすい。
ウィークリーダイアリーはマンスリーとウィークリー、全てを備えた完璧な1冊です。
それぞれ個性が違うけれど、用途に合わせてお使いいただきたいと思います。

ミツロウ引きの紙は使っていくうちに使い込んだ風合いが出てきます。紙なので年月を得るごとに徐々に劣化しますが、それが味に思えるし愛着も湧いてくる。
ダイアリーの厚みにピッタリ合わせられるので、薄いものは薄いまま持つ事ができます。

そして新たに正方形の下敷きも作りました。
スムーズで適度な柔らかさの革を敷いて万年筆で書くとすごく書き味がよくなるし、ペンが適度に止まって文字も美しくなります。文字を書く前に下敷きを挟んで書く、心の余裕も欲しいところです。
オリジナル正方形のダイアリー、軽くて細いキャップレスデシモとともに使っていただきたいと思っています。

⇒パイロットキャップレスデシモ20カラーズ
⇒SkyWind ミツロウ正方形ダイアリーカバー
⇒正方形ダイアリー用革下敷き
⇒正方形ダイアリー

関連記事

⇒2014.12.16「日本の技術とさりげなさ~パイロットキャップレス~」

*前の記事「手を掛けられたステーショナリー」

手を掛けられたステーショナリー

手を掛けられたステーショナリー
手を掛けられたステーショナリー

仕事で台湾に行っていました。
歩き回る旅でしたので荷物は最小限にしたいと思って、確実に機能してくれるものだけを持って行きました。
遊びの要素はなるべく排して、仕事で使うものだけを厳選。
万年筆は飛行機に乗ってもインク漏れしないと信頼しているペリカンを1本だけを持って、メインで使うのはシャープペンシルでした。
芯を何本か入れておいたら、そう簡単になくならないし、事故もない。ハイユニの芯ならヌルヌル気持ち良く書くことができます。
手帳はカンダミサコさんのバイブルサイズに、予め調べておいたことや、出張中のスケジュール、ToDoを書いておいて、原稿も書けるように十分な用紙も補充しました。
いろんなお店を見たりして刺激を受けて、いつもよりたくさんのことを書くだろうと思っていました。
結局、飛行機の中でも、夜部屋に戻ってからも何か書いていて、やはりバイブルサイズくらいのスペースがないといけなかったので、システム手帳としては薄めのカンダさんのバイブルサイズのシステム手帳がちょうどよかった。

台北の文具店は、誠品書店という別格を除くと2つのタイプがありました。
1つは比較的規模が大きい古いタイプの文具店でした。店の中央にレジカウンターがあって、事務用品から万年筆までの文房具一通りを揃えているけれど、陳列は荒っぽく、置いている品物にこだわりは感じられない。その代わり値段は安い。
もうひとつは文具雑貨店とも言える店。店の奥にレジがあり、文具店というよりも文具のある生活を提案しているようなライフスタイルショップでした。個人経営だと思われる小さなお店であることが多かった。

行こうと思って調べておいた良さそうなお店では日本製のステーショナリーがその店の雰囲気を作る役に立っていたし、どのお店でも日本製のステーショナリーに対するリスペクトを感じました。
良さそうなお店の多くは10年以内に作られたようなところがほとんどで、旧来の台湾の文具店とは違った新しい感覚で作られたものでした。その新しい感覚の中心に、日本のライフやツバメノートなどの古くからあるステーショナリーが選ばれているというのは不思議な感じがしなくもなかったけれど、台湾も大量生産、大量消費ではなく、ひとつひとつの値段は高くても、人の手が感じられる良いものを少しずつ使うという考え方も新しいタイプのお店のメッセージだと思いました。

それは当店も同じで、メーカーがその技術力で仕上げた工業製品である万年筆に、ペン先調整という一手間かけることでその万年筆をより書き味の良いものにしている。
今回台湾行きで持って行ったカンダミサコさんのシステム手帳も工房楔のシャープペンシルも、手のかかる良い素材を、手を掛けてよいものに仕上げて長く愛用できるものにする。ただ機能を満たせば良いのではなく、そういうものは値段は少し高くなるけれど、使っていて心地良い、長く愛用できるものだということを伝えたくて店をしている。

そんなことを改めて思い出した台湾への出張でした。

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*前の記事「メーカーを支える中堅万年筆~WATERMANエキスパート~」